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改正貸金業法における上限金利引き下げとその影響 改正貸金業法における上限金利引き下げとその影響

平成18年12月に可決・成立した改正貸金業法の3つの柱のうち、総量規制と並んで注目される事項が、金利体系の適正化のひとつである、上限金利の引き下げです。みなし弁済規定(いわゆるグレーゾーン金利)を撤廃し、出資法の上限金利を20%に引き下げる内容についてのポイントとその影響についてみてみましょう。

■上限金利の引き下げとは?

貸金業者が貸付けを行う際の上限金利には、2つの金利を規制する法律が関わっています。ひとつは「利息制限法」であり、もうひとつは「出資法」ですが、この2つの法律が規定する上限金利には乖離があり、その部分がグレーゾーン金利と呼ばれています。

利息制限法は、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約について適用される法律で、利息制限法の1条1項では、上限利率を越えた利息は、その超過部分を無効とすると定めています。上限利息は元本額によって年15%〜20%です。
一方、出資法は、広く出資金の受入れの禁止等を定めた法律ですが、5条に、業として金銭の貸付けを行う者は、上限金利を年29.2%とし、違反した場合は刑事罰に処せられると定められています。

従来の貸金業規制法43条では、グレーゾーン金利について、一定の条件を満たせば、利息制限法に定める利息額を超える利息であっても、債務者が利息として任意に支払った金銭であれば有効な弁済とみなすとされていました。これが「みなし弁済規定」であり、これを根拠に貸金業者は利息制限法を超えて出資法の上限金利である29.2%の利息を有効なものとして貸付けを行ってきました。(以上、改正前の図参照)

しかしながら、平成18年1月13日に最高裁によりグレーゾーン金利での貸付を無効とするに等しい判決が下されたことも受け、今回成立した改正貸金業法では、出資法の上限金利を利息制限法の水準まで引き下げ、グレーゾーン金利を撤廃する条項が盛り込まれました。

4条施行日において、出資法も一部改正され、業として行う高金利違反の罪となる金利は、年29.2%を超える金利から、年20%を超える金利へと引き下げられることになります。

■上限金利引き下げは貸金業者にどのような影響をもたらすか

上限金利が利息制限法の上限まで引き下げられた背景として、グレーゾーン金利の撤廃を目的としていたことのほかに、「借り手の返済能力に比べて出資法の上限金利29.2%は高い金利であり、多重債務を生み出す一因となっている一方で、貸金業者は高金利で儲けているのではないか」という批判的な見方をされていたからという点があります。

しかし、金利を引き下げるということは、利息を収益とする貸金業者にとっては、資金調達コストや貸し倒れリスクのコスト、ランニングコストといった事業コストを考慮しない強制的な値下げであり、大幅な収益減で経営が圧迫されることは必然です。利息制限法以下で経営を成り立たせるためには、事業コストを削減するしかありませんが、削減できない小規模業者の多くは廃業を余儀なくされてしまうことになるでしょう。

このような貸金業者の淘汰と消費者金融市場の縮小は、法改正においては当然に予定されたことなのかもしれません。しかし、それが引いては、借り手の不利益につながる恐れを懸念する声も多く聞かれます。

■上限金利引き下げは借り手にどのような影響をもたらすか

借入金利が下がれば、借り手側にとっては金利負担が少なくてすみ、今までよりも返済しやすくなることは確かでしょう。返済がしやすくなれば、多重債務になる危険性も減少することが期待できます。

一方、貸金業者への影響はどうでしょうか。
消費者金融は、銀行等が対応できない無担保・短期・少額の融資で資金供給する役割を担っています。また、一般的に融資までの期間が短いことも特徴であり、多少金利が高くても、「今日」必要な資金を「今日」借りることができるといった利便性の高さも、借り手のニーズを満たしてきているはずです。

貸金業者が、そういった対応が可能なのも、貸し倒れリスクのコストを加味しても利益が出る金利設定ができていたからに他なりませんが、今後は、金利を下げても、収益がでてビジネスとして成り立つよう、貸し倒れリスクのコストをなるべくとらないような動きになっていかざるをえないでしょう。

つまり、今までは信用リスクの高さから29.2%であれば借りることができていた人が、15〜20%では借りられないという事態を招き、健全な利用者であっても、借りたいのに借りれないといった不利益が生じてきます。
そのように消費者金融の機能や市場が縮小していけば、その役割に頼らざるを得ない多くの中小企業や個人事業者の資金繰りも悪化するでしょう。そして、倒産の急増につながれば、社会全体の経済活力も失われていくことが懸念されます。

■今後の動向について

上限金利の引き下げは、是か非か。法案可決まではもとより、改正貸金業法成立以降も様々な議論がなされています。

弱者となりうる消費者の保護、多重債務者を生まないために、国が業界規制を強化することの意義は大きいのですが、行き過ぎた規制はかえって弊害をもたらすこともあります。そのバランスをとることは非常に難しいとは思いますが、消費者・業界そして社会全体が共に発展していくような方向への転換が望まれます。

また、利用者側である個人も、きちんとした判断能力を持って自己責任で、貸借取引、消費契約、金銭管理を行うべきですが、読み書き・計算はできても、金融リテラシーがまだまだ低いのが実情です。

賢い消費者を育成するためにも、国や業界をあげての、消費者への金銭教育・啓蒙活動、早期からの金銭教育への取り組みも大事なのではないでしょうか。日本貸金業協会や日本消費者金融協会では、すでに消費者への金銭教育の活動が行われているようですが、今後の活動の拡大にも期待したいところです。



(図)グレーゾーンの撤廃と上限金利の引下げ

(図)グレーゾーンの撤廃と上限金利の引下げ

金融庁HP「貸金業法等の改正について」より

【参考文献】
日本貸金業協会「JFSA白書(平成20年度版)」
日本消費者金融協会「消費者金融白書(平成20年度版)」
日本消費者金融協会「JCFA 40th フォー・ザ・ネクスト・ステージ」
井出荘平「サラ金崩壊 グレーゾーン金利撤廃をめぐる300日戦争」(早川書房)
小林幹男「「貸せない」金融 個人を追い込む金融行政」(角川SSC新書)
藤沢久美、他「理解されないビジネスモデル 消費者金融」(時事通信社)
小林節「国家権力の反乱」(日新報道)

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